予備校が教育を救う
丹羽健夫
文芸新書411(2004) \
ISBN:4-16-660411-2

予備校が教育を救う 表紙

読書好きの機能材料工学科中山則昭先生が、私が工学教育研究センターの仕事を手伝うと聞いて、 「面白い本がありますよ」と貸して下さったので読みました。

著者は、河合塾急成長の旗ふりをなさった方だと思います。 大学入試に失敗した浪人の受験指導から出発した塾が、社会のひずみや公教育の矛盾の中で、 そのかえって自由な立場を存分に利用して自在に変身しながら、 今や、教育に欠かせない組織へと発展してきた理由がよく分かりました。 最初は、点取り技術を教える立場であったに違いないが、高校が塾のやり方を盗んだ結果、 今度は勉強の本質が分からないでもがいている受験生に勉強の新の面白さを教える立場に立たざるを得なくなる。 公教育の堕落の原因の1つは、大学の教育学部が、つまらない講義を行ってきたことにより、 面白くない講義しか出来ない教員をつくったという下りは、当たっている?本質を離れた教育は、 勿論大学教育も含めて、人間を堕落させる。教育学部の先生には必読の新書判であろう。 塾変革のキッカケが全共闘世代の塾講師の採用にあったというのも、 同世代を見ながら生きた者として納得がゆく。最後に、50歳も超した、あの変革の旗ふりが、 今何をしようとするのか、と制度疲労に例外は無いことを鋭く、さりげなく指摘している。

(溝田 忠人)