あなたのなかのサル−霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源
フランス・ドゥ・ヴァール、藤井留美子[訳]
早川書房(2005) \1,900
ISBN:4-15-208694-7

あなたのなかのサル 表紙

人間の本質に関わる本にやっと出合った!著者(類人猿生態学者)は、チンパンジーとその近縁のボノボを通して、 人類の本質とは何かを考察します。チンパンジーと人間は約700万年前に、ボノボは、250万年前に分岐したが、 ボノボの生態が分かってきたのは最近です。前者が、攻撃的性格で実力行使によって序列を維持、 ボノボは、なんとセックス行為によって平和的にその社会を維持します。見かけは違うが、 進化過程により獲得された多様性です。群の維持のため、繰り出す手は、変幻自在、人間顔負け。 社会構造を持つ哺乳類はすべて高度共感行動を持っているが、人類は言葉を持ち、返って本質が見えないと指摘します。 類人猿の行動は、人と差が無いといいます。ボノボの生態描写は、まるでポルノ本、最後に掲載された微笑ましい写真は、 もし人であったら完全に発禁本。戦争を止めず、高度な共感行動を持つ人間は、チンパンジーとボノボの両面を持っている。 そのバランスこそ必要と結論します。同じ著者の、フランス・ドゥ・ヴァール著、西田利貞・藤井留美子訳 「利己的なサル、他人を思いやるサル―モラルは何故生まれたか」、草思社(1998) ISBN4-7942-0799-9 も、本書の前段階として面白く、参考になりますが、著者の思考は本書で集大成されています。

(溝田 忠人)