生命の起源 地球が書いたシナリオ
中沢弘基
新日本出版社(2006) \1,900
ISBN:4-406-03255-X

生命の起源 地球が書いたシナリオ 表紙

大学―大学院を通して大変お世話になった、1年先輩の著者に戴いた本です。生命は海に生まれたと一般に考えられてきました。 基本的な有機物は無機的に出来ることが明らかですが、生命という「組織化」がどこでどのように起こったかは謎です。 著者は、鉱物学、結晶学、材料科学の第一線の研究者としてのキャリアを生かして、従来の生命起源論に、地球進化の観点を導入し、 その可能性を探っています。粘土鉱物に吸着した有機物を含む地層がプレートテクトニクス運動につれて地下に埋没され、 温度、圧力のみならず、地下における濃集過程や水から切り離される環境への遭遇により、それが可能となったというのです。 生命となった後、地殻運動により再度海に出て適応・発展していったと考えます。 有機物の細胞様の凝集塊(コアセルベード)の形成(オパーリン)や粘土への吸着(バナール)は既に提唱されていましたが、 最近の地球ダイナミックスの成果を取り入れて、過去の説の矛盾を洗い出し、まるで推理小説のように 生命の起源の謎解きに迫ります。地球進化による環境の変化を「圧力」として発生と進化の道を考えるべきだと言う主張を、 具体的に立証しようという立場は、旧知のひいき目無しに納得できます。粘土鉱物の有機縮合反応への触媒作用など実験的な アプローチも紹介されており。謎に一石を投じる一冊で、巨大な疑問と闘う精神を読み取ってください。

(溝田 忠人)