靖国問題
高橋哲哉
ちくま新書(2005) \720+
ISBN:4-480-06232-7

靖国問題 表紙

戦後60年、戦中生まれの私にも、靖国問題の対立がなぜ起こるのか理解に苦しむ。 今問題になっている憲法改正とそれに連動する教育基本法の改正論議の根幹が正に「靖国」であろう。 勿論、政治は宗教を利用して最大限の効果を得ようとすることは理解しているつもりだが、なぜ、多くの、かつ、結構な有識者が、 靖国にこだわるのかが分からなかった。そこに、東大哲学の俊英が書いた本書が出たので勉強のため購入した。 本書は、歴史的事実と国民感情の側面から多くの例を引用して、国家神道として、靖国神社信仰が日本人の生死感の最終的な意味付け、 戦争による死の意味付け、を提供したとする。戦争で一人息子を亡くした老婆の「ありがたい」心情を綴った引用や、 石橋湛山の靖国廃止論、小泉首相の発言の矛盾、合祀取り下げを主張する台湾高砂族出身の女性代議士と靖国裁判で必死に 靖国を擁護する「靖国の母」の見解など、衝撃的な内容である。靖国問題の解決には、完全な政教分離、 戦争の放棄と戦争責任の明確化がなければ、別の追悼施設をつくる等の対策的対応は本質的な解決に成らないと結論する。

ここでも、人間の成長発達段階に獲得した情理が、人の精神的基盤を形成し、容易には修正できないものであることを知る。 読んだ後に、更に「何故だ」という思いが残った。

(溝田 忠人)