いちばん大事なこと−養老教授の環境論
養老猛
集英社新書(2003) \660+
ISBN:4-08-720219-4

いちばん大事なこと 養老教授の環境論 表紙

養老先生の本はいくつか読んでいるが、これがいちばん面白かった。環境問題の難しいのは、 意識外の実態である環境問題を脳の意識のみで分かったように錯覚してしまうことにある。地球や生命はシステムにより構成され、 意識では到底理解出来ない。ゲノム解読により人間の全てがわかると思うのは、その種の錯覚である。 人間の情報機関は遺伝子と脳の2つで、ゲノム解読は、遺伝子を脳で理解できるように翻訳しているに過ぎない。 遺伝子は細胞システムの中で始めて働けるが、細胞があって初めてエネルギー代謝、修復、複製を行うことが出来る、 しかし、未だ人間は細胞1つ作れない。

最後の提案は傑作だ。養老先生は、都市の人間に「参勤交代」を義務付け、1年に3ヶ月は田舎に移って暮らすようにすると言うのだ。 これにより、自然への理解が深まり、リフレッシュもできるという。経済効果を産出すべきと訴える。過去の文明の崩壊は、 森林伐採などの自然破壊により起こったという認識も含めて、先に紹介したPLAN B 2.0 によるL. Brownの提案、エネルギー使用に基づく税制と、補助金の改革により、文明の崩壊を止めようというのとよく似ている。 随所に誤解を受けそうな危うい文章が出てくるが、これがこの人の特徴でもある。

(溝田 忠人)