日本人の精神と資本主義の倫理
波頭亮、茂木健一郎
幻冬舎新書(2007) \720+
ISBN:978-4-344-98057-0

日本人の精神と資本主義の倫理 表紙

産業倫理という講義の一部を受け持つので、倫理と題名がつく本に目が行ってしまう。 加えて茂木健一郎という若手の秀才の発言には興味がある事が多い。 帯封のキャッチフレーズには「日本が堕ちきった先に見る希望とは?」とある。 茂木さんは、余りにも有名だが、波頭さんは、東大経済出身の経営コンサルタントである。 随所に面白い記述があるのに全体としては、不完全燃焼感が残る。 「プロフェッショナルたるべき人のモラル」を嘆く。 富裕層が寄付をしない、国立美術館が公募展を開くという見識の無さを嘆く、 「識者が大衆という化け物に迎合している」のだそうだ。 イギリスのハイカルチャーは大衆化に抗する一線を堅持しており、 エルミタージュ美術館はエカテリーナの達見が、サンクトペテルブルグの観光目玉を今に遺しているのだそうである。 帝政ロシアの途方も無い蓄財のあだ花も確かにすばらしい。 「人間には様々な価値のナチュラルバランスがあるはず」 「文化はマネジメント如何でいかようにでもインストールできる」、 (Googleのように)「強大な力を持つものこそ自己規制がなければならない」。 「経済的な格差など幸せになるためには大した問題ではないと皆が飲み込んでしまえば、一瞬にして多くの事が変わる」 などなど、そういう意識改革がどうして出来ないかを横に置いて、果てしない議論と苛立が繰り返される。 タイトルの壮大さにも関わらず、日本のエネルギーや食糧問題が一つも出てこない事に違和感を感じる。 生活の基盤を論じないと苛立がつのるのではないだろうか。ともあれ現在の識者の考え方が良くわかる。

(溝田 忠人)