「希望の島」への改革 ―分権社会をつくる
神野直彦
NHK BOOKS 906(2001) \870+
ISBN:14-001906-9

「希望の島」への改革 表紙

国を挙げて(?)競争社会が喧伝されるが、 地球資源、環境、食糧などの現状を見るとき、どうも嘘っぽい。 スウェーデンにヒントがあると探していて見つけた本です。著者は東大経済の財政学現役教授。 競争社会でなく協力社会を目指すべきと結論する。競争社会を機能させるには 子どもたちの教育にも競争を動機づけなければならなくなる。 そうして育った子どもは他者を敵とし、憎しみの対象とする社会をつくることになる。 そうではなく、他者への思いやり、相互協力、他者の成功に献身など「協力原理」を教えなければならない。 競争は手段であり目的にはなり得ない。産業構造が重化学工業から、 情報・知識集約産業へ転換する転換点において、明確な目標を掲げなければならない。 中央政府、社会保障基金の政府、地方政府という3つの「協力の政府」を確立する事を提唱する。 これらが協力してセーフティーネットを構成し、年金、社会保障等を管掌する。 現状後追いでは道に迷う、「歴史の峠」では、長期的なビジョンを示して問題解決に当たらなければならない。 「希望の島」へ進む、明確なビジョンを示している。 スウェーデンの中学の教科書に掲載されている、ドロシー・ロー・ホルトの詩「子ども」を引用しており、 そこに「約束の地」の姿が見える。 ドロドロした財政学のイメージではなく、人間の本質との関わりの基本をきっちりと示してくれており、 何が本物か分からなくなったら、是非読んでもらいたい、希望の持てる一冊です。

(溝田 忠人)