PLAN B 3.0, Mobilizing to Save Civilization
Lester R. Brown
W.W. Norton & Co. Ltd./New York・London(2008) $17.00
ISBN:978-0-393-33087-8

PLAN B3.0 表紙

2年前の“PLAN B 2.0”(書評掲載)の全面改定版です。地球と人間の遭遇した危機に対してどうすべきか、熱く述べています。現在を産業革命以後の文明の危機ととらえ、これを救うには、本書に提案された諸行動を、戦時総動員態勢(アメリカは、日本の真珠湾攻撃の後、ルーズベルト大統領の下で、一般の車の製造を3年間止めて、武器、航空機などの兵器生産に総動員した)のスピードで行うことが必要と説きます。再生可能なエネルギーの1つの風力発電を3つの州で行うと、全米の電力需要をまかなえるとの1991年の試算がありましたが、現在の進んだ風力発電を同じ3つの州で行うと、何と全米の全“エネルギー量”に相当する電力を生み出せます。温暖化対策に、2020年までに二酸化炭素削減80%を達成するという目標を提唱し、それに向かって、高効率化・省エネ、再生可能新エネ開発、システムの変更等々を総動員すると提案します。風力発電は、2020年、世界目標30億kWを設定していますが、2006年実績は7,400万kWです。しかし、急速に伸び、国別一人当たりの発電平均では、デンマークとスペインは既にこの2020年の目標を超え、2010年にはドイツも超します。他の項目の目標も高いが、先進的な所は既に目標を達成しており、他の国も出来ないはずは無いという論法には説得力があります。面白い計算が紹介されています。約1,000m2の土地で風力発電を行うと、年間30万ドル分の電力になりますが、同じ土地でトウモロコシを収穫しバイオエタノールを作ると0.1%の300ドルにしかならないのだそうです。その上、風力発電機設置によって耕作は殆ど妨げられません(私の経験では巨大風力発電機の羽の下で、農作業をやる気にはなりませんが)。そこで、アメリカでは多くの農民が風力発電に突進しています。風は気ままですが、広域のネットワーク:太陽光発電、小規模水力発電、バイオマス発電、地熱発電等、と組み合わせた送電線網を構築すれば緩和できます(そういう意味では、日本では電力会社が全面的に協力しないと難しいでしょう)。目標は巨大ですが、アメリカでは斜陽の自動車産業の転換等で新しい就業人口を吸収できます。ドイツ等では既に、風力発電に多くの働き先を作り出しています。政治経済的インセンティブ:持続可能性に役立たない税金と補助金を減らして所得減税にまわすこと、を提唱します。世界の軍事費の1/6(米国の軍事費の1/3)を使えば、提唱する地球の文明を救う全予算、1,900億ドルがまかなえると言います(日本の外貨準備高は8,000億ドルを超しています)。グリーンランドの氷床の急速な融解は西南極大陸の氷層融解と合わさると、12mの海面上昇につながる;中国の貧困の減少が歴史的な偉業である;韓国の植林事業がすばらしい成果を上げた;古紙の回収率は韓国が77%で世界1である;中国の淡水魚養殖が海洋漁獲を上回り、極めて効率の良い食物連鎖を利用している;インドは小規模酪農生産により、食品廃棄物等を旨く利用して、生産を上げ、米国を抜いて世界1である;人間の排泄物をバクテリアの力を利用して、無臭で水使用を極端に減らして肥料に再利用するスウェーデンの技術が注目されている;等々、驚きと興味をかき立てます。この本の内容は、多くの人に広めて2020年の目標達成に動いてもらいたいという願いから、インターネットからダウンロードできます(www.earthpolicy.org)。

(溝田 忠人)